抗PD-1抗体/抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ®」 新たな二つの適応を取得 治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌 PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌
August 25, 2021 12:00 am ET
報道関係各位
MSD株式会社
MSD株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:カイル・タトル、以下 「MSD」)は、本日、抗PD-1抗体「キイトルーダ®(一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))」について、以下に関する国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得しましたのでお知らせいたします。
- 治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌
- PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌
治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌に対する適応拡大について
結腸・直腸がん(大腸がん)は、結腸または直腸に発生するがんで、通常、結腸や直腸の内側の粘膜にポリープと呼ばれる腫瘍として始まり、時間をかけてがん化します。日本では1年間に約156,700人が大腸がんと診断され、年間約53,800人が亡くなっていると推定されており、がんの罹患数では第1位、死亡数では第2位となっています*1。欧米のデータによると切除不能大腸がんの約5%(日本では約2~3%)にMSI-Highが認められ、標準治療である化学療法の有効性に関するエビデンスが乏しく*2予後不良の傾向があることから、新規治療薬の開発が求められていました。
今回の承認は、化学療法歴のない治癒切除不能な進行・再発のミスマッチ修復(MMR)欠損またはMSI-Highを有する結腸・直腸がん患者307例(日本人22例を含む)を対象とする国際共同第3相試験KEYNOTE-177試験のデータ等に基づいています。同試験において、キイトルーダ群は化学療法群と比較して、主要評価項目の一つである無増悪生存期間(PFS)を有意に延長しました(HR=0.60 [95% CI, 0.45-0.80])。安全性については、安全性解析対象例153例中、キイトルーダ群で高頻度(10%以上)に認められた有害事象は、下痢(24.8%)、疲労(20.9%)、そう痒症(13.7%)、悪心(12.4%)、AST増加(11.1%)、発疹(11.1%)、関節痛(10.5%)および甲状腺機能低下症(10.5%)でした。
PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌に対する適応拡大について
乳がんは、日本では、1年間に約95,000人(女性: 94,400人、男性700人)が診断され、年間約15,700人(女性)が亡くなっていると推定されます。女性のがんの中では最も多いがんで、特に40歳代後半〜60歳代後半の罹患率が高い傾向があります*1。乳がんは、主にホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)受容体、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、がん細胞の増殖能(Ki67)という3つの要素を調べることにより5つのサブタイプに分類されています*3。その一つにトリプルネガティブ乳がん(TNBC)があり、ホルモン受容体の発現やHER2過剰発現を伴わないサブタイプです。TNBCは、乳がん全体の約15%を占め、50歳未満の女性に多く、他のタイプの乳がんに比べ一般に増殖能が高く生存期間も短いといわれています。
今回の承認は、転移・再発乳癌に対する化学療法歴のない転移・再発又は局所進行性のトリプルネガティブ乳癌患者847例(日本人87例を含む)を対象とした国際共同第3相試験KEYNOTE-355試験のデータ等に基づいています。同試験において、キイトルーダ併用群*4はプラセボ併用群*5に対して、PD-L1陽性(CPS*6≧10)患者323例(日本人28例を含む)において、主要評価項目の一つである無増悪生存期間(PFS)を有意に延長しました(HR=0.65 [95% CI, 0.49-0.86])。安全性については、PD-L1陽性(CPS≧10)患者における安全性解析対象例219例中、キイトルーダ併用群*4の主な副作用(20%以上)は、貧血(48.9%)、悪心(41.1%)、好中球減少症(39.7%)、脱毛症(34.7%)、疲労(29.2%)、好中球数減少(23.7%)、下痢(21.9%)、ALT増加(21.5%)及び嘔吐(20.1%)でした。
なお、PD-L1の発現状況を検査するための体外診断薬として、アジレント・テクノロジー株式会社のPD-L1 IHC 22C3 pharmDx「ダコ」が承認されています。
キイトルーダ®について
キイトルーダ®は、T細胞に主に発現する受容体であるPD-1と、腫瘍細胞に発現するそのリガンドPD-L1およびPD-L2の相互作用を阻害する抗体です。キイトルーダ®はPD-1に結合し、この受容体とリガンドとの結合を阻害することによって、T細胞に生じたPD-1経路を介する抗腫瘍活性の抑制を解除します。
キイトルーダ®は、2017年2月15日に国内で販売を開始しました。これまでに「悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」「再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫」「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌」「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」「がん化学療法後に増悪したPD-L1陽性の根治切除不能な進行・再発の食道扁平上皮癌」の効能又は効果について承認を取得しています。また、前立腺がん、胃がん、肝細胞がん、小細胞肺がん、子宮頸がん、進行性固形がんなどを対象とした後期臨床試験が進行中です。
キイトルーダ®は、米国を含む93カ国で承認を取得しており、世界では現在、1,500以上の臨床試験において30種類以上のがんについて検討が行われています。
MSDは、重点分野と位置付けるがん領域で患者さんと医療従事者のニーズに応えていけるよう、革新的な医薬品の開発を進め、承認取得に向けて取り組んでいきます。
※1:国立がん研究センターがん情報サービス 「がん登録・統計」(人口動態統計・全国がん登録) 2021年のがん罹患数予測および死亡者数予測
※2:大腸癌研究会 「大腸癌治療ガイドライン 医師用2019年版」
※3:Goldhirsch A, et al: Ann Oncol 24: 2206-2223, 2013
※4:キイトルーダ®+化学療法(ゲムシタビン及びカルボプラチン、パクリタキセル又はnab-パクリタキセル)併用群
※5:プラセボ+化学療法(ゲムシタビン及びカルボプラチン、パクリタキセル又はnab-パクリタキセル)併用群
※6:PD-L1を発現した細胞数(腫瘍細胞、マクロファージおよびリンパ球)を総腫瘍細胞数で除し、100を乗じた値
以上
MSDについて
MSD(Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.が米国とカナダ以外の国と地域で事業を行う際に使用している名称)は、130年にわたり、人々の生命を救い、人生を健やかにするというミッションのもと、世界で最も治療が困難な病気のために、革新的な医薬品やワクチンの発見、開発、提供に挑みつづけてきました。MSDはまた、多岐にわたる政策やプログラム、パートナーシップを通じて、患者さんの医療へのアクセスを推進する活動に積極的に取り組んでいます。私たちは、今日、がん、HIVやエボラといった感染症、そして新たな動物の疾病など、人類や動物を脅かしている病気の予防や治療のために、研究開発の最前線に立ち続けています。MSDは世界最高の研究開発型バイオ医薬品企業を目指しています。MSDの詳細については、弊社ウェブサイトウェブサイト( www.msd.co.jp) や Facebook 、 Twitter 、 YouTube をご参照ください。
参考資料
抗悪性腫瘍剤「キイトルーダ®」