3Dプリンティングを活用して革新的なソリューションを生み出す
3D技術は、ワークストリームの最適化、時間短縮、コスト削減、イノベーションの推進に役立っています。
MSDの3Dテクノロジー部門(3DT部門)は、医薬品やワクチンの研究、開発、商業化の方法を変革しています。
近年、仮想現実、拡張現実、人工知能は急速に普及していますが、同様にMSDでは3Dプリンティングが注目を集めており、研究室、製造現場、さらには宇宙においても3D技術が活用されています。
3Dプリンティングとは?
3Dプリンティングは、アディティブ・マニュファクチャリング(材料を積層し、立体を作り出す製造方法)とも言われ、CAD(コンピューター支援設計)ソフトウェアを使用して、層を重ねながら3次元の物体を作り出す方法です。この3Dプリンティングは、最終的なデザインを大きな材料の塊から切り出す従来の製法とは異なるため、材料の無駄が少なく済み、設計の自由度も増します。
3DT部門のディレクターであるマーク・デュランテは、「3Dプリンティングは革新的であり、機能面と影響力の両方において成長を続けています。そして、ライフサイエンスなどの分野での技術革新競争において、おそらく勝敗を分ける最も重要な要素のひとつへとまさに進化しています」と述べています。
プリンティングだけではない、ハイブリッドなアプローチ
3DT部門のエンジニアと開発担当は、射出成形、機械加工、熱成形、鋳造、ウォータージェット・レーザー加工などの伝統的な技術を活用しながら、エンジニアリング、設計、製造を行っています。このようなハイブリッドなアプローチにより、入手困難な製造部品の製造や、新しい研究で使用する組織や細胞のプロトタイプ作製、紙切れにメモしたアイデアを実行可能なデザインに転換するなど、ビジネス上のチャンスや課題に効率的に対処することができます。
「ラボに初めて訪れた人は皆、3D技術の機能を自在に使うことができる環境に衝撃を受けます。最初のプロジェクトを完了する頃には、彼らの3Dプリンティングに対する見方は一変しています」とデュランテは述べます。
実際に、デュランテのチームは、MSDが国際宇宙ステーションでの実験で使用した機器を設計しました。3Dプリンターで作ったこの機器は、使いやすさが高く評価されています。また、さまざまな実験に使用する注射器を比較的安価に製造できるように設計されているため、宇宙で化学反応の活性化を調査している他の研究者たちにも活用できる機会が広がっています。
3Dプリンティングがイノベーションを促進し、研究をサポート
3DT部門は、既成概念にとらわれないソリューションを提供し、これまでの概念を根本的に変えるようなイノベーションを生み出す拠点となっています。1日に6~7件の依頼を受け、そのほとんどは前例のない発明案件です。完了した3Dプロジェクトは3,500件近くに達し、この数は毎年倍増し続けています。いくつかの特許を取得し、世界中に4つのラボ(米国ニュージャージー州、ペンシルベニア州、アイルランド、シンガポール)を設け、5つ目のラボ(ラテンアメリカ)の設立を計画中です。
「私たちは全社の中で、カスタムソリューションの最前線に立ちつつあります」とデュランテは述べています。
では、3DT部門の成果の具体例を見てみましょう。
カプセルへの薬剤充填を改善
3DT部門は、初期の臨床試験で使用するカプセルに薬剤を充填するため、ロボットアームとの接続部分にあたるグリップとブロックを設計・製作しました。これにより、コスト削減のみならず、納期の短縮と作業員の安全性の両方が改善しました。
薬剤の鼻腔ペプチドへの影響を解明
3DT部門は、吸入された薬剤の沈着パターンを研究するための鼻腔模型を製作しました。解剖学的に正しいこの模型を用いることにより、ラボでの試験の精度と正確性が向上し、製剤決定に要する時間が短縮されました。
「3D技術の限界は人間の想像力のみです」
数々の受賞歴を持つ3DT部門は、MSDの“センター・オブ・エクセレンス”であり、ライフサイエンス業界全体に新たなスタンダードを築くことにも貢献しています。今後もその勢いが衰えることはないでしょう。
「3D技術はデジタルと物理的手段の究極的な調和であり、限界は人間の想像力のみです」
-マーク・デュランテ(MSD 3DT部門ディレクター)
「私たちが目指しているのは、MSDの全社員が自らのアイデアを自由に生み出し、最初の時点から3DT部門に相談して可能性を追求できるようになることです。最終的には、私たちは全員、医薬品やワクチンを必要としている人々に、できるだけ早く届ける、という同じ目標に向かって取り組んでいるのです」とデュランテは語ります。