抗がん剤「レンビマ®」 「キイトルーダ®」との併用療法について、 日本において進行性腎細胞がんに係る適応追加を申請

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2021/03/31 00:00 Asia/Tokyo

各位

エーザイ株式会社

MSD株式会社

エーザイ株式会社(本社:東京都、代表執行役CEO:内藤晴夫、以下 エーザイ)とMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の日本法人であるMSD株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長: カイル・タトル、以下 MSD)は、このたび、エーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤「レンビマ®」(一般名: レンバチニブメシル酸塩)について、Merck & Co., Inc. Kenilworth, N.J., U.S.A.(北米以外ではMSD)の抗PD-1抗体「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ)との併用療法における進行性腎細胞がんに係る適応追加を申請したことをお知らせします。本申請は「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法における日本で最初の申請となります。

本申請は、進行性腎細胞がんの一次治療を対象とした臨床第Ⅲ相CLEAR試験(307/KEYNOTE-581試験)結果に基づいており、本試験結果は、2021年2月に開催された米国臨床腫瘍学会泌尿器 がんシンポジウム2021での発表と同時にthe New England Journal of Medicine誌に掲載されました。本試験では、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法は、主要評価項目である無増悪生存期間(Progression-Free Survival: PFS)、並びに重要な副次評価項目である全生存期間(Overall Survival: OS)と奏効率(Objective Response Rate: ORR)について、対照薬のスニチニブに対する統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示し、主要評価項目および重要な副次評価項目を達成しました。なお、本試験における本併用療法の安全性プロファイルは、これまでに報告されている臨床試験のものと同様でした。

腎がんの罹患者数は2020年には、世界で43万人以上と推定され、約18万人が亡くなったとされています1。そのうち、日本では2020年に2万5千人以上が新たに診断され、8千人以上が亡くなられたと推定されています2。腎細胞がんは、腎臓における最も発生頻度の高いがんで、腎がんの約9割を占めるとされています3。腎細胞がんは、多くの場合、他の腹部疾患の画像診断時に偶発的に発見されます。腎細胞がん患者様の約30%は、診断時に転移が確認され、約40%の患者様は局所性腎細胞がんに対する一次外科治療後に再発すると報告されています4,5。生存率は診断時のステージによって大きく変わりますが転移性腎細胞がんの5年生存率は12%であり、予後の悪い疾患です6

エーザイとMSDは、2018年10月より日本において「レンビマ」の情報提供を通じた協業を実施しています。両社は引き続き協業を強化し、本剤によるがん患者様への貢献を最大化していきます。

以上

参考資料

  1. 「レンビマ」(一般名: レンバチニブメシル酸塩)について

「レンビマ」は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)であるVEGFR1、VEGFR2、VEGFR3や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)のFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4に加え、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)のPDGFRα、KIT、RETなどの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼに対する選択的阻害活性を有する、経口投与可能なエーザイ創製のマルチキナーゼ阻害剤です。

非臨床研究モデルにおいて、「レンビマ」は、がん微小環境における免疫抑制因子として知られている腫瘍関連マクロファージの割合を減少させ、インターフェロンガンマ(IFN-γ)シグナル伝達刺激により活性化細胞傷害性T細胞の割合を増加させることで、抗PD-1モノクローナル抗体併用時は、「レンビマ」および抗PD-1モノクローナル抗体のそれぞれの単剤療法を上回る抗腫瘍活性をもたらします。

現在、本剤は、単剤療法として、甲状腺がんに係る適応で日本、米国、欧州、中国、アジアなど70カ国以上で承認を取得しており(米国では、放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がんに係る適応)、また、切除不能肝細胞がんに係る適応で日本、米国、欧州、中国、アジアなど65カ国以上で承認を取得しています。加えて、血管新生阻害剤治療後の腎細胞がんに対するエベロリムスとの併用療法に係る適応で米国、欧州、アジアなど60カ国以上で承認を取得しています。欧州での腎細胞がんに係る適応については「Kisplyx®」の製品名で発売しています。さらに、全身療法後に増悪した、根治的手術または放射線療法に不適応な高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high: MSI-H)を有さない、またはミスマッチ修復機構欠損(mismatch repair deficient: dMMR)を有さない進行性子宮内膜がんに対する「キイトルーダ」との併用療法に係る適応で米国、カナダ、オーストラリアなど10カ国以上で承認を取得しています(本承認は奏効率、奏効期間に基づく迅速承認であり、別途検証試験の実施が求められます)。日本においては、単剤療法として胸腺がんに係る適応も取得しています。

  1. 「キイトルーダ」(一般名:ペムブロリズマブ)について

「キイトルーダ」は、自己の免疫力を高め、がん細胞を見つけて攻撃するのを助ける抗PD-1抗体です。「キイトルーダ」はPD-1とそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2との相互作用を阻害して、がん細胞を攻撃するTリンパ球を活性化するヒト化モノクローナル抗体です。Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.(米国とカナダ以外ではMSD)は業界最大のがん免疫療法臨床研究プログラムを行っており、現在1,400を超える「キイトルーダ」の臨床試験を実施し、幅広い種類のがんや治療セッティングを検討しています。「キイトルーダ」の臨床プログラムでは、さまざまながんにおける「キイトルーダ」の役割や、「キイトルーダ」による治療効果が得られる可能性を予測する因子について模索しており、さまざまなバイオマーカーの模索も行っています。

日本では、「悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」「再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫」「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌」「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」「がん化学療法後に増悪したPD-L1陽性の根治切除不能な進行・再発の食道扁平上皮癌」の効能又は効果について承認を取得しています。

  1. 腎細胞がんについて

腎がんの罹患者数は2020年において、世界で43万人以上と推定され、約18万人が亡くなったと推定されています1。そのうち、日本では2020年において、2万5千人以上が新たに診断され、8千人以上が亡くなられたと推定されています2。米国では2021年において、7万6千人以上が新たに診断され、約1万4千人が亡くなられると推定されています3。腎細胞がんは、腎臓における最も発生頻度の高いがんで、腎がんの約9割を占めるとされています3。男性は女性の約2倍の頻度で発症するとされています3。腎細胞がんは、多くの場合、他の腹部疾患の画像診断時に偶発的に発見されます。腎細胞がん患者様の約30%は、診断時に転移が確認され、約40%の患者様は局所性腎細胞がんに対する一次外科治療後に再発すると報告されています4,5。生存率は診断時のステージによって大きく変わりますが転移性腎細胞がんの5年生存率は12%であり、予後の悪い疾患です6

  1. CLEAR試験(307/KEYNOTE-581試験)について

本試験(ClinicalTrials.gov, NCT02811861)は、進行性腎細胞がんの一次治療を対象に、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用あるいは「レンビマ」とエベロリムスの併用療法をスニチニブと比較する、多施設共同、無作為化、非盲検の臨床第Ⅲ相試験です。主要評価項目は、RECIST v1.1(固形がんに対する腫瘍径の変化を効果判定に用いる評価基準)に基づく独立画像判定による無増悪生存期間です。重要な副次評価項目には、全生存期間、奏効率および安全性が含まれています。1,069人の登録患者様が、「レンビマ」(20 mg、1日1回経口投与)/「キイトルーダ」(200 mg、 3週ごと静脈内投与)併用、「レンビマ」(18 mg、1日1回経口投与)/エベロリムス(5 mg、1日1回経口投与)併用、または対照薬であるスニチニブ単剤(50 mg、1日1回経口投与、4週間投与後、2週間休薬)に無作為に割り付けられました。

本試験の主要評価項目であるRECIST v1.1に基づく独立画像判定によるPFSについて、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法は、PFSの中央値が23.9カ月(95%信頼区間[Confidence Interval: CI]: 20.8-27.7)であり、スニチニブの9.2カ月(95%CI: 6.0-11.0)と比較して、増悪また死亡のリスクを61%減少させました(HR=0.39 [95%CI: 0.32–0.49]; p<0.001)。本試験の重要な副次評価項目について、本併用療法は、スニチニブと比較して、死亡のリスクを34%減少させました(HR=0.66 [95%CI: 0.49–0.88]; p=0.005)。中央値27カ月のフォローアップ期間で、OSの中央値は「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法およびスニチニブ両群ともに未達でした。本併用療法は、71.0%(95%CI: 66.3-75.7)のORR、16.1%の完全奏効(Complete Response: CR)率、および54.9%の部分奏効(Partial Response: PR)率を示し、スニチニブは、36.1%(95%CI: 31.2-41.1)のORR、4.2%のCR率、および31.9%のPR率でした(相対リスク=1.97[95%CI: 1.69-2.29]; p<0.001)。本併用療法の奏効期間(Duration Of Response: DOR)の中央値は25.8カ月(95%CI: 22.1-27.9)であり、スニチニブは14.6カ月(95%CI: 9.4-16.7)でした。

投与中止に至った治療関連有害事象(Treatment-related adverse events: TRAEs)は、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法において、「レンビマ」は18.5%、「キイトルーダ」は25.0%、両薬剤は9.7%の患者様でみられました。一方、スニチニブでは、10.0%の患者様でみられました。グレード5のTRAEsは、スニチニブでは0.3%の患者様でみられたのに対し、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法では、1.1%でした。グレード3以上のTRAEsは、スニチニブでは58.8%の患者様でみられたのに対し、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法では71.6%でした。全グレードにおける最も一般的なTRAEs(発現率20%以上)は、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法では、下痢(54.5%)、高血圧(52.3%)、甲状腺機能低下症(42.6%)、食欲低下(34.9%)、疲労(32.1%)、口内炎(32.1%)でした。一方、スニチニブでは、下痢(44.4%)、高血圧(39.1%)、口内炎(37.4%)、手足症候群(35.9%)、疲労(32.1%)、悪心(27.6%)でした。

  1. エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.による戦略的提携について

2018年3月に、エーザイとMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.は、「レンビマ」のグローバルな共同開発および共同販促を行う戦略的提携に合意しました。本合意に基づき、両社は、「レンビマ」について、単剤療法およびMerck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の抗PD-1抗体「キイトルーダ」の併用療法における共同開発、共同製造、共同販促を行います。

既に実施している併用試験に加え、両社は新たにLEAP(LEnvatinib And Pembrolizumab)臨床プログラムを開始しました。これにより、「レンビマ」と「キイトルーダ」の併用療法は14種類のがん(子宮内膜がん、肝細胞がん、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞がん、頭頸部扁平上皮がん、尿路上皮がん、胆道がん、大腸がん、胃がん、膠芽腫、卵巣がん、膵臓がん、トリプルネガティブ乳がん)における20を超える臨床試験が進行中です。

  1. エーザイについて

エーザイは、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献する「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」を企業理念としています。当社はグローバルな研究開発・生産・販売拠点ネットワークを持ち、hhcの実現に向けて戦略的重要領域と位置づける「神経領域」「がん」を中心とするアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域において、世界中の約1万人の社員が革新的な新薬の創出と提供に取り組んでいます。

当社はhhcの理念のもと、サイエンス、臨床科学、患者様の視点から、顧みられない熱帯病、持続可能な開発目標(SDGs)を含む世界のアンメット・メディカル・ニーズに対して、革新的なソリューションの提供をめざします。

エーザイ株式会社の詳細情報は、www.eisai.co.jpをご覧ください。Twitterアカウント@Eisai_SDGsでも情報公 開しています。

  1. MSDについて

MSD(Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.が米国とカナダ以外の国と地域で事業を行う際に使用している名称)は、130年にわたり、人々の生命を救い、人生を健やかにするというミッションのもと、世界で最も治療が困難な病気のために、革新的な医薬品やワクチンの発見、開発、提供に挑みつづけてきました。MSDはまた、多岐にわたる政策やプログラム、パートナーシップを通じて、患者さんの医療へのアクセスを推進する活動に積極的に取り組んでいます。私たちは、今日、がん、HIVやエボラといった感染症、そして新たな動物の疾病など、人類や動物を脅かしている病気の予防や治療のために、研究開発の最前線に立ち続けています。MSDは世界最高の研究開発型バイオ医薬品企業を目指しています。MSDの詳細については、ウェブサイト( www.msd.co.jp )や Facebook Twitter YouTube をご参照ください。

1 International Agency for Research on Cancer, World Health Organization. “Kidney Fact Sheet.” Cancer Today, 2020.

https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/cancers/29-Kidney-fact-sheet.pdf.

2 International Agency for Research on Cancer, World Health Organization. “Japan Fact Sheet.” Cancer Today, 2020.

https://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/populations/392-japan-fact-sheets.pdf.

3 American Cancer Society. Key Statistics About Kidney Cancer,

https://www.cancer.org/cancer/kidney-cancer/about/key-statistics.html.

4 Thomas A. Z. et al. The Role Of Metastasectomy In Patients With Renal Cell Carcinoma With Sarcomatoid Dedifferentiation: A Matched Controlled Analysis. The Journal of Urology. 2016 Sep; 196(3): 678–684. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5014677/.

5 Shinder B. et al. Surgical Management of Advanced and Metastatic Renal Cell Carcinoma: A Multidisciplinary Approach. Frontiers in Oncology. 2017; 7: 107. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5449498/#__ffn_sectitle.

6 Padala, S. A., Barsouk, A., Thandra, K. C., Saginala, K., Mohammed, A., Vakiti, A., Rawla, P., & Barsouk, A. (2020). Epidemiology of Renal Cell Carcinoma. World Journal of Oncology, 11(3), 79–87. https://doi.org/10.14740/wjon1279.


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